「謎の老人ケン・イシダは幸運の青い鳥だった 」の巻き。
ムーネです。25年以上前のトロントでのワーキングホリデー生活を記憶をたどりながら書いてます。
それではお楽しみください。
大家さんのケン・イシダさんから他の物件へ移ることも可能と、助け船をだされた私は、二つ返事でそれを受け入れた。
(移ることになった経緯はこちらを御覧ください) ↓↓↓
nobubladerunner.hatenablog.com
それにしても偶然というか奇跡とでもいうか、ちょうど1部屋空がでるなんて・・・。
私はツキに見放されてはなかった。
「移るのは3日後、色々と準備がありますので・・・、それまではこの部屋で我慢してください」
私は恐縮しきりだった。
「ケンさん、本当にありがとうございます」
これ以上迷惑もかけられないし、失敗もしたくなかったので2~3質問をした。
「治安はどうなんですか?」
「ダウンタウンの外れにあるので、悪くないですよ」
「住人の方は?」
「3人住んでいましてね、日本人の女性、白人の男性、あと何でしたっけね〜何かの音楽やってるジャマイカ人の男性がいますよ・・・」
「ケンさん❗今なんて言いました?
なんと申しました?ジャ、ジャ、ジャマイカ人?」
「確か〜レゲエとかなんとか言う音楽かな?音楽で飯を食べているんじゃないかな〜?」
私は心の中で歓喜した。
「お〜ジーザス❗」
そして自問自答した。
「お前、何の音楽好き?」
「何でも好きだけど特にレゲエ」
「何になりたいだっけ?」
「レゲエとかのDUBミキサー」
「これ奇跡だよな?奇跡の出逢いだよな?」
「うん」
ケン・イシダ、日系カナディアン。
この不思議な雰囲気をかもしだす老人は「幸せの青い鳥」だった。
私は興奮せずにはいられなかった。
こんな早い段階で幸運をつかめるとは思ってもみなかった。
私は、まだ見ぬレゲエミュージシャンを勝手に想像しまくった。
「ケンさん、その人ドレッドかけてます?」
「ドレッド?何かわからんけど・・・
毛むくじゃらなオジサンだよ」
「オジサン?レゲエのオジサン?」
「ムーネさんより二まわりくらい歳が離れているんじゃないかい?」
「オジサンですか・・・」
この際、レゲエ小僧だろうが、レゲエのオジサンだろうが、どうでも良かった。 レゲエという事実さえあれば良かった。
オジサンさんともお友達になれる❗
「ムーネさん、私は帰りますよ」
興奮冷めやらぬ私を尻目に、ケンさんは帰っていった。
翌日、サチエさんと近況報告ということで、会う約束をした。
セコンド カップというコーヒーチェーンで待ち合わせをした。日本で言えばドトールコーヒーみたいなものだ。
サチエさんは先に席に座っていた。
相変わらずフリルのお洋服がイカしていた。
コーヒーを飲みながら、私達は語らった。
「ムーネ、部屋決まったんでしょ?どんな部屋なの〜?」
「それがさ〜、色々あってさ〜、移ることになったんだよね〜」
サチエ驚いた表情を浮かべた。
「幸いなことに、大家さんが他の物件に移るかい?って言ってくれてさ〜。近々、引っ越しだよ」
「良かったじゃない」
サチエさんは姉ちゃんのように心配してくれた。
「ムーネ聞いてくれる〜、マーヴィンがさぁ〜しつこいのよ❗」
(マーヴィンとは交流サロンで知り合った白人の禿げたカナディアンのオジサンである)
「あの禿げた鶏ガラみたいな人ね」
「サチエの英語をスキルをアップさせるためだって 、毎日デートに誘うのよ〜」
「じきに治まるんじゃないかな〜。交流サロンで可愛い日本人の子見つければ・・・すぐでしょ」
サチエさんが不機嫌そうな顔をした。
「それどういう意味〜?私が可愛くないってこと?」
「違います!違います!」
こんなやりとりを2~3時間続け、私達は家路に着いた。
つづく