そこまでやる〜?これが和製暴走トラックだ!
ムーネです。25年以上前のトロントでのワーキングホリデー生活を記憶をたどりながら書いています。それではお楽しみくさい。
久し振りにサトルと会った。寿司ビストロ「オーシャンブルー」をサトルが辞めて以来だった。元気そうだったが、以前より疲れてる感じもした。
「ムーネ久し振りだな〜」
「バイトは決まったのか?」
「バイトは決まった。新しい部屋にも移った。クレイグの禿に追い出されて大変だったよ!」
新居はシェアハウスではなくワンルームと言うことだった。クレイグさんに「君とは一緒には住めない!」と半強制的に追い出された形だった。
本当にクレイグさんも大変だったと思う。私だってサトルとの共同生活なんて勘弁してくれよだ!
相当な覚悟で奴に出ていってくれと言ったに違いない。何せサトルは身長185㎝、体重100㎏の暴走トラックの様な奴なのだから!キレたらなにをするか分からない。
率直な感想としてワンルームなんてどういう事だ?また無理してるな〜と思った。ワンルームの家賃をバイトだけでは支払えるわけないのだ。
まぁ〜親からの仕送りがあると言うし、私が心配することではなかった。
サトルとの思い出は数々あるが、ハロウィンの時に仮装して町に繰り出したことは今でも思い出す。
しかし一番の思い出のエピソードは奴が路上で白人の大男とストリートファイトをしたことだ。
今、思い出しただけでも吹いてしまうくらいサトルの暴走っぷりは凄かった。
あの日、私とサトルは賑やかなストリートを歩いていた。前から路上生活者らしき白人の大男が歩いてきた。ブツブツと独り言を言いながら何かに怒っているように見えた。見えない敵と戦っていたのか?それは分からない。気にはなったが危害が及ぶとは思っていなかった。
私とサトルが白人の大男の横を通り過ぎようとした時に事件は起きた。
「ガッデッム!☆##●$=!=##●$¥!」
サトルの顔が苦痛で歪んだ。白人の大男がサトルの肩にパンチをいれたのだ!
私は何が起きたのか分からなかった。
サトルも何でこうなったのか把握できずにいた。
白人の男は明らかに目がいっていた。私達を挑発するかのようにファイティングポーズをとったが、へっぴり腰だったので怖さは感じなかった。
「come on! come on!#=!$☆●#=!」
白人の大男が興奮冷めやらず挑発していた。もう相手にせず行こうとサトルに言ったが聞く耳を持っていなかった。
白人の大男が間髪いれずサトルにネコパンチを打ってきた。サトルもこれに応戦しネコパンチを返した。ここからはもうメチャクチャだった。
サトルの気迫にビビり逃げ惑う白人の大男。それを追うサトル。
車の通行などおかまいなしで車道でやりあう二人。フェイントをかけ、何とか逃げようと頑張る白人の大男。ラグビー仕込みのタックルを仕掛けようとするサトル。
それはもうマンガにでてくる大捕物劇だった。想像して欲しい。白人の大男を執拗に追いかける巨漢の日本人を!
笑ってはいけない場面だったが、面白すぎて笑いを堪えることはできなかった。後でサトルに怒られたのは言うまでもない。
結局、白人の大男の強靭なスタミナについていけずガス欠になり、サトルは追うこと止めた。とりあえずケガがなかったのが何よりだった。
こんな日本人離れした暴走っぷりをみせるサトルだったが、弱い面も併せ持っていた。とにかく寂しがり屋だった。
日本にいる彼女に国際電話を頻繁に掛けまくり金と時間を浪費していた。
その事が仇となり、サトルは金欠に陥った。
「○万円でいいから貸してくれないか?」
「前にもダメだと言ったよな!」
「お前しか頼む奴いないんだ!頼む!」
結局、私は根負けしてサトルに○万円を貸すことになった。ワーキングホリデーの若造には痛い金額だったが、サトルを信用して貸した。
その日以来、奴からの連絡は途絶えた。裏切られたと思ったが、とりあえず担保として親の連絡先を聞いていたので何とかなると思った。サトルのマンションにいってはインターフォンを押し続けた。
私の粘り勝ちで何とか○万円を返してもらった。サトルは言い訳じみたことを言ってきたが、どうでもよかった。
私とサトルは二度と会うことはなかった。
25年以上経った今、言えることはサトルと出逢って良かったな〜と言うことだ。
こんなにアホでオモロイ奴はそうは出逢えないと思う。
つづく