謎の老人ケン・イシダと対峙 とうとう部屋をGETだぜ❗
ムーネです。25年以上前のトロントでのワーキングホリデー生活を記憶をたどりながら、面白おかしく書いてます。
それではお楽しみください。
相変わらず、アランとシャノン夫妻には良くしてもらっていた。
美味しい食事は当たり前で、部屋もキレイ。
週末にはトロントのチャイナタウンで飲茶をご馳走してくれるなんて普通だった。
よく聞くのが、ビジネスライクなホストファミリーに当たってしまう人。
食事は粗末で部屋は汚いなど恵まれないホームステイをする人が結構いるそうです。
そんな恵まれた環境も、あと数日。
早急にシェアハウスを探さなければ❗
私は日加タイムス(週刊の日本語新聞)のシェアハウス住居人募集欄を余すとこなく見回した。
「ダウンタウン中心部の静かな住宅街にあり?いいんじゃないか?」
早速、電話した。
「ケン・イシダと申します。どちら様ですか?」
老人の声で流暢な日本語が聞こえてきた。(英語じゃなくて良かった❗)
「部屋を探してまして、見せていただきたいなと・・」
「それでしたら明日、部屋を見てみますか?」
「よろしくお願いします」
住所を聞き、私は電話を切った。
とりあえず住む所はなんとかなりそうだ。
次の日、ケン・イシダさんと約束した住所へ向かった。トロントのダウンタウンにある住宅街だった。
確かに静かで治安が悪そうな感じはしなかった。
一人の老人が話しかけてきた。
「ムーネさんですか?ケン・イシダです」
ケン・イシダ、日系カナディアン、歳は70歳後半くらいといったところか。背は非常に小さく、160㎝前後だったように思う。
物腰が非常に柔らかかった。
私はケンさんの物件へ入った。木造の非常に古い家だった。
家の中は薄暗く、不気味な雰囲気をかもしだしていた。
木の床が所々でミシミシと音を立てていた。
部屋に入ると、ベットと小さな机があるだけだった。
「この部屋です。キッチン、バスルームは共同で、300ドルです」
私は悩んだ。「ここに暮らすのマジで?」と思ったが、300ドルという安さが魅力で、私は葛藤した。
(家賃については25年以上前の記憶なので、正確には思い出せないが、安かったのは確かです)
「どうしますか?ムーネさん」
ケンさんが静かに決断を促してきた。
その物腰の柔らかさが、逆に怖さを感じた。
「日にち的に余裕もない。ダウンタウン中心部だから便利。それ以上にこの家賃は魅力的だ。古くてボロいのさえ我慢すれば・・・」
私は即決できず、困り果てていた。
ケン・イシダの目が早くしろと言っている。
住めば都 というじゃないか❗なんとかなるだろ❗
私は決断した。
「よろしくお願いします」
ケン・イシダさんが笑った。
「こちらこそよろしくお願いします。
何か困ったことがあったら言ってください。あと、ムーネさんの他に黒人の男の方が住んでますから、後日紹介しますよ」
どんな人か見ておきたかったが、今は留守らしい。
私達は家を出て、そして別れた。
とりあえずホッとした。ホームステイ終了後の住みかを確保したからだ。
私はリッチモンドヒルに無事に帰還すると、シャノンへ報告した。
「とりあえず部屋を見つけてきた」
シャノンは心配そうに言った。
「あなたには居てもらいたいの・・
けれど、数日後には第弐号ゲストが来ることが決まっているの、わかって」
そうなんです❗
私は彼ら夫妻には記念すべき❗
第壱号ゲストだったのです❗
「ノープロブレム、心配しないで」
シャノンは私に微笑みながら言ってくれた。
「あなたは家族みたいなものよ。いつでも遊びに来なさい」
私は住む部屋をGETし、数日後にはダウンタウンにて独り立ちすることになった。
つづく