アンチェインな生活 海外生活回想録編

もっと自由で有意義な生活を切望する中年男が、若かりし日、アンチェインだったカナダ生活を回想するブログ

予行練習でニューヨークへ行きます! パート2 なにゆえボトルマンと戦うのか?

ムーネです。25年以上前のトロントでのワーキングホリデー生活を記憶をたどりながら書いています。それではお楽しみください。

ニューヨークへ着いた。私とヒデオは朝食を食べた後、安宿探しに奔走した。
流石にニューヨークだ。ガイドブックに載るようなホテルは私達には高すぎた。
とりあえずユースホステルへ行ってみることにした。

25年以上前のニューヨークのユースホステルは20ドル前後で泊まれたと記憶している。もしかしたら、もっと安かったかもしれない。貧乏旅行者にとっては有難い料金設定だった。

何とかユースホステルに宿泊できることになった。わからない方もいるかもしれないので説明しておこう。

ユースホステルの多くが1つの部屋に二段ベットが何個かある相部屋だった。
だからこんなに安いのだ。

そういう所なのでデメリットもあった。

貴重品の類いは肌身離さず持っていないと盗まれてもおかしくない。

足の臭い奴が同部屋にいると本当に最悪。

大男のイビキがうるさくて寝れない。

劣悪とまでいかなくて快適とは言えない部屋だった。

少し落ち着いてから、私とヒデオは観光に出かけた。ひと通りの有名観光地を巡り楽しんだ。

日も暮れて、私達は夕食を食べることにした。

「ヒデオ、これからどうする?」

「お楽しみはこれからやん!何処かオモロイ所ないか?」

「それじゃ〜クラブでも行くか?」

「ディスコか!いいね〜」

「お前、デスコって!古る〜」

私達はクラブに繰り出すことにした。無難にガイドブックに載っている有名所にしておいた。ディープなクラブに行ってみたいと思ったが、変なクラブに入って身ぐるみ剥がされるのも嫌なので冒険するのは止めといた。

クラブへ行くと、熱気で満ち溢れていた。
ヒデオはクラブに行くのは初めてらしかった。その割りには恥ずかしがらず、踊っていた。
不格好な踊り方だったが、楽しんでいた。それでいいと思った。カッコつけて踊らずにいるより、男だと思った。

私もニューヨークのクラブをおもいっきり満喫した。

とりあえず夜を楽しんだ後、タクシーで帰り、ユースホステルでおとなしく寝た。

ニューヨーク二日目、ひと通り観光して、私とヒデオがストリートを歩いていると事件は起こった。

前から歩いて来た中肉中背の黒人の男がヒデオにぶつかってきた。

「ガシャン!」

黒人の男が持っていた紙袋が地面に落ち、何かが割れる音がした。

「何やってくれてるんだ!これは上質なウイスキーなんだぜ!弁償してくれよな!」

ヒデオが噛みついた。

「オッサンがぶつかってきたんやろ!」

「ぶつかったのはお前だ!50ドルに負けといてやるから支払ってくれよ!」

「何言うてんねん!」

「お前!払わないと知らんぞ!俺のブラザーが向こうの路地で待っている。呼んでくるか?」

黒人の男が裏路地を指差した。薄暗い路地で、ジャックナイフやメリケンサックを持った筋骨隆々としたブラザー達が待機していても、おかしくない雰囲気を醸し出していた。

私はヒデオを一喝した。

「お前!マジでヤバイぞ!奴に50ドルくれてやれよ!」

「大丈夫や!俺のことナメてるだけや!」

私は日頃からチャイニーズ・カナディアンの友達、ヤーウェイから口酸っぱく言われていた。

「ムーネ、もし物取りや暴漢などに因縁つけられても、決して抵抗するな!金出せ!と言われたらダミーの財布を渡せ!決して戦うなよ!」

私も、もっともだと思った。こんなことで命を落としたり、怪我したくなかった。
私は反対側の歩道に退散し、しばらく事を見守っていた。

まだ黒人の男とヒデオは言い争っていた。
何とかせねば!と思った。

そんな時、救世主が現れた。向こうの方からポリスが歩いてきた。私は大声で叫んだ。

「ポリ〜ス!」

ポリスと言う声に反応した黒人の男は、マズイと思ったのか、そそくさと裏路地へ消えていった。

「ヒデオ!お前!マジにヤバかったぞ!」

「大したことないやん!」

「バカヤロ〜!刺されたりしたらどうするんだ!俺まで巻き添え食うの御免だぜ!」

「その時はその時やん!」

「お前!ふざけるなよ!」

呆れるしかなかった。

後でわかったことだが、黒人の男性はボトルマンと言う観光客を狙う詐欺師だった。
安いウイスキーやワインのボトルが入った紙袋を落としては金銭を要求すという汚いやり方だった。

皆さんにお聞きしたい。もし自分がボトルマンに遭遇し、金銭を要求されたらどうするだろうか?それも怪しげな裏路地を指差され、俺のブラザーが向こうで待ち構えてるぜと言われたら!はたして正気でいられるだろうか?それもニューヨークという完全アウェイでた!

私だったら支払っていたかもしれない。
大した金額ではないし、面倒臭いことに巻き込まれたくないからだ。詐欺師というのはそう言う痛いところ突いてくるのだと思う。

こんなことがあったのにヒデオが私の神経を逆撫でするような事を言ってきた。

「俺さ〜。ロックフェラー・センタースケートリンクで滑りたいや!付き合ってくれるか?」

「なんで野郎同士でスケートしなきゃならんのじゃ!勝手に滑ってろ!」

ヒデオはスケートリンクで楽しそうに滑っていた。私はただそれを見ていた。呑気な野郎だと思った。

ニューヨークを去る日、バスターミナルで何故かわからないがヒデオが同じバスに乗るフランス人女性と仲良くなっていた。
私は居ないものとなっていた。バスの中でも隣の席に座りイチャついていた。
「やってられんわ!」
ふて寝するしかない私であった。
つづく