マド〜ナ?なぜマド〜ナ?どこがマド〜ナ?私は私ですから!
ムーネです。25年以上前のトロントでのワーキングホリデー生活を記憶をたどりながら書いています。それではお楽しみください。
レゲエ親父エソには本当に気にかけてもらった。
「ムーネ、彼女いないのか!俺がプリティーな黒人の彼女を紹介してやる」
「ムーネ、ジャマイカに行きたいなら俺に言えよ!ばあちゃんの連絡先を教えるから。訪ねて泊めてもらえ!」
ある日、こんな優しいレゲエ親父エソがレコーディングスタジオに誘ってくれた。
「明日、ダチのレコーディングスタジオに行くんだ。ムーネも行くか?」
私は二つ返事で行くと答えた。エソには前にDUBミキサーになりたいと言っていたので、誘ってくれたんだと思う。
当日、レコーディングスタジオに行ってみると、規模は小さかったが、それなりの機材がある、ちゃんとしたスタジオだった。
「ジャパニーズのダチ、ムーネだ!」
「よろしくな!見ていってくれよ!」
レゲエ親父エソの友達、ティムさんは私を快く受け入れてくれた。
スタジオには私達3人の他に主役であるシンガーがマイクの前でスタンバっていた。白人でブロンドヘアーの女性だった。黒の革ジャンを着ていて格好いいが、意識高い系の臭いがプンプンした。それはガラス越しからでもわかった。
エソとティムさんがレコーディングについて打ち合わせをしていた。
私はいつ始まるのだろうかと静かに見ていた。
「それじゃサンドラいこうか!」
軽快なリズムが流れてきた。ヒットチャートによく流れるPOPな曲だった。サンドラが歌いだした。
「#・・☆¥&"""☆…〜!¥$☆…〜!」
サンドラの歌唱力は可もなく不可もなくで、POPなダンスナンバーを無難に歌っていた。
はっきり言って私には退屈だった。彼女から魂を感じとることはできなかった。レゲエミュージシャンのレコーディングだと思っていたので拍子抜けしたところもあったのだと思う。
休憩に入り、3人が曲について激論を交わしていた。サンドラは何かに納得できないようだった。
「私はそうは思わない!」
エソとティムさんはサンドラにタジタジといった感じだった。何を納得できないのか?膠着状態が続いた。
私は関係ないですよといった態度をしていると、サンドラからいきなりきた!
「そこのJapanese guy!」
「私ですか?」
「そう、あなた!どう思う?」
「何が?」
「何がって!感じた事言って!」
感じた事って!退屈とは言えんだろ!何を言っていいのか分からなかったが、口から出た言葉がこれだった。
「貴女はマドンナのようだ」
キマッタ!と思った。白人ブロンド・シンガーには最高な褒め言葉だと思った。
「マド〜ナ?マド〜ナ!Why?」
何か悪いこと言ったかな?マズイぞ!
何か機嫌悪いぞと思った。
「マド〜ナ?どこがマド〜ナ?」
「歌い方がマド〜ナ!容姿がマド〜ナ!」
収拾がつかなくなってしまった。サンドラの攻撃に耐える気力は私には残されてなかった。苦笑いして攻撃に耐えていた。
「私は私!マド〜ナじゃないわ!」
エソが助け船を出してくれた。
「こいつは俺のダチなんだ。サンドラのことを褒めてるんだよ!わかってやってくれよ!」
サンドラの波状攻撃が止まった。私はスタジオを何とか脱出した。
エソとティムさんには悪いことをしたと思った。
帰ってからエソに謝った。
「気にするな!お前は悪くないよ」
そう言ってもらって本当に有り難いと思った。私がマドンナのようだなんて言わなければこんな事にはならなかったと、つくづく思う。
この後、エソの魂が詰まったアルバムをたっぷり聞かされたのは言うまでもない。
つづく