アンチェインな生活 海外生活回想録編

もっと自由で有意義な生活を切望する中年男が、若かりし日、アンチェインだったカナダ生活を回想するブログ

これ腐ってます!変な匂いがします!いやいや!腐ってないですから!

ムーネです。25年以上前のトロントでのワーキングホリデー生活を記憶をたどりながら書いてます。お楽しみください。

ジャパニーズレストラン「日本の心」のホールのバイトをGETしたことは前回書きましたが、今回は「日本の心」で起きた数々のエピソードを書きたいと思います。

50歳過ぎた女主人が経営する「日本の心」は目抜通りに面した小さな店でした。
たいした売りもなく、日本の心とうたっているのに喫茶店のような内装で何の特色もない店でした。
時給は忘れましたが、クソ安かったです。
基本的にキッチン二人、ホール二人で回してました。
小うるさい女主人はほとんどキッチンに入っていたので、ホールの私はあまりプレッシャーを受けることはありませんでした。
キッチン組はよく「糞ババア〜が!」と言っていたので、相当ムカついていたのでしょう。
夜のシフトになると、女主人は疲れて帰ってしまうことが多々あったので店は無法地帯化してました。
日本語ベラベラな白人のカナディアンがホールにいたんですが、客が少ないからと言って客席に座り、小説を読んでいました。
「さすがにまずいだろ!」と言っても聞く耳持たず、平気な顔で読んでいました。

25年以上前は、日本食はと言うと、今のような世界的ブームではありませんでしたので、一般のカナディアンにはあまり馴染みがなかったと思います。(スシ〜テンプ〜ラ〜ぐらいです)
こんなエピソードがありました。

日本食は初めてであろうカナディアンの白人女性が店に入って来て、メニューを見せて欲しいと言ってきました。
彼女は太巻きををテイクアウトで注文しました。
女主人が丹精込めて作った太巻きを持って女性は喜ばしそうに帰って行きました。「良かった、良かった、これで日本食ファンがまた1人増えるかもな」と物思いにふけっていると女性が戻ってきました。
納得のいかない表情を浮かべ、信じられない言葉を発しました。
「これ変な匂いがします!腐っています!お金返してください!」
匂いを嗅いでみると、ただの海苔の匂いでした。日本人ならかぐわしい匂いです。
これ以上私では対処できず、女主人を呼びました。
太巻きが腐っているから、金返せって言われてるんですが・・・」
「何言ってるのよ❗しっかりしてよ❗私が説明するわ❗」
カナディアン女性と女主人の凄まじいバトルが勃発しました。
しかし女主人は海苔とはこのような物で、腐ってはいないと納得させる事ができず、お金を返しました。完全な敗北でした。
昨今、世界的な日本食ブームで海苔の認知度も高まり、ヘルシーな食べ物として人気を博していますが、当時は「何だこれは?食べ物ではない!黒い紙だろ!」など苦手な人も多かったみたいです。


打って変わって、海藻類のヒジキが非常に気に入って常連になってしまった御客さんもいました。目鼻立ちがくっきりしたメキシコ系の女性でボーイッシュな髪型、服装をした可愛い感じの人でした。
私はこの女性をヒジキちゃんと呼んでいました。
ヒジキちゃんは決まって、1人で来て隅の席に座りました。
私は何か気になっていました。
頼むものはいつも決まっていて、和食のセットでした。
ある日、ヒジキちゃんが私に声を掛けてきました。
「これ、とても美味しいです。何ですかこれ?」
付け合わせの小鉢で出るヒジキでした。
ヒジキちゃんが物欲しそうに空の小鉢を見ていたので、もう1つヒジキをサービスしました。
ヒジキちゃんは嬉しそうにヒジキをパクつきました。
ただただ脇役で目立たないヒジキをこれほどまでに美味しく頂いているヒジキちゃんを見ていて、私までも嬉しい気分になってしまいました。

この日を境に、ヒジキちゃんが来ると私は小鉢にてんこ盛りにヒジキを盛りました。
ヒジキちゃんも好意的に私に話し掛けてくれました。
「もしかして恋が始まるか〜」と淡い期待を抱きました。
そんな私の期待とは裏腹にヒジキちゃんはフェードアウトするかのように来なくなりました。今となってはいい思い出です。

次回は「日本の心」で起こった最大のエピソードを語ります。お楽しみに!
つづく